小笠原旅日記④ 「母島TILEAF CLUB」

事業所の正面玄関脇には「母島TILEAF CLUB」と書かれたポスターが掲示されています。

どうやらこのポスター、事業所の方のお手製のようです。
そこには「家族や友達のお祝いにLEIを渡したいけど用意していない」「母島のレジェンドが力になります」の文字が。

小笠原では仲良くなった人が内地へ帰る時や友人が内地に引っ越してしまう時などに手作りの首飾り「レイ」をプレゼントするそうです。そのレイは、船が汽笛を鳴らして港から離れていく時に一斉に海に向かって放り投げられます。投げたレイが流れて岸に辿り着けば、戻ってくることができると言われているのだそうです。

 

 

 

事業所の冷蔵庫にはティーリーフの葉が10枚1ロールにして、たくさん冷凍されています。

ティーリーフの葉10枚で長いレイが1本できるというお話しでした。そして、利用者さん達はこのレイ作りのベテラン中のベテラン。レイを必要としている人はこの事業所に来れば、まさに「母島のレジェンド」が経験に裏打ちされた技量で手を貸してくれるという訳です。とっても素敵な取り組みですね。

E氏と私が活動の様子を見学している間にも職員さんが庭に咲いている花をいくつか摘んできて、利用者さんと手早くレイを作っていました。ものの数分もしないうちにレイの出来上がり。出来上がったレイは二つ、そうこれはなんと利用者さんからのE氏と私へのプレゼントだったのです。

利用者さんが直接、レイを首にかけてくれました。利用者さんも私達も思わずこぼれる満面の笑み、南の島の素晴らしい思い出となりました。

 

さあ、確認するべきことは確認し、聞くべきことは聞きました。時刻も間もなくお昼になります。今回の母島の通所介護事業所での調査は終了です。

Mさん始め職員の皆さん、利用者の皆さんに別れを告げ、港へ向かいました。E氏と私は再び父島を目指し、ははじま丸に乗り込みます。

間もなくははじま丸は港を離れました。鳴り響く汽笛、E氏と私は首のレイに手をかけて思いっ切り海に投げ込みました。レイはくるり、くるりと回転しながら落ちて行き、着水しました。思わずその行き先に注目してしまいます。港の方に向かって流されていくレイ。どうやらもう一度、母島に戻って来ることができそうです。

「次に来る時は荷物にジョギングシューズもいれなければいけないな、M所長と走れるようにね。」

固く心に誓い、船室に入ったのでした。

続く。